バディファイト外伝 「一番星 ヒカル」
「勝ち星は、オレのものだよ☆!」
大きな歓声が会場内に響き渡る。
その声の中心には、派手な衣装を身にまとい、ポーズを決める男がいる。彼の勝利宣言を受けて、実況者も声を荒げた。
「決まったあぁっ! 《モデルバディファイター最強決定戦》準決勝第二試合、勝ったのは、期待の超新星、
盛り上がりも当然。
年に一度開催される、芸能業界を巻き込んだ一大イベント『モデルバディファイター最強決定戦』の準決勝が、今決着したのだ。これで、本年度の決勝進出者が決まった。
その一人が彼、いまだに決めポーズを決め続けている一番星ヒカルだ。現在中学三年生のヒカルは、本大会初出場ながらも快進撃を続け、ついに決勝へとコマを進めたのだった。
「ヒカル選手、ついに次は決勝戦ですが、意気込みなどはございますか?」
「愚問だね。勝つのは当然、この一番星ヒカルさっ☆」
「すごい自信ですね。なにか秘策が?」
「秘策? それは当然、このオレが一番星ヒカルだからに決まってるじゃないか☆」
「え?」
「そう! 世界はオレを中心に回っているか・ら・ね☆!」
ヒカルがウインクすると、煌びやかな星々が飛ぶ。
これにはインタビュアーも苦笑いするほかない。
観客やインタビュアーにとって、これもすでに見慣れた光景だった。派手で、自信家で、何に対してもポジティブな彼こそが、世間から見た一番星ヒカルという《キャラ》だった。
そう、世間から見たら――
決勝戦は、翌日である。
◇ ◇ ◇
「ただいま」
街角の商店街。
その中にある小さな弁当屋の裏口から、俺は家へと入った。
「あら、お帰りなさいヒカル。意外と早かったわね」
「まぁね」
「おめでとう。試合中継見てたわよ~」
「……ありがと。それより、今日の売れ行きはどうよ」
「おかげさまで、今日も一通り完売したわ」
母さんは嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔を見て、内心ほっとするの半分、照れ臭くなるの半分といったところだ。
「そっか。じゃ、俺は明日に備えるから」
照れるのを隠すように、俺はすぐに二階へと足を運んだ。
そんな俺の後ろから、母さんの声が飛ぶ。
「ちゃんとお父さんにも報告するのよ~」
「わかってるよ」
後ろを向いたまま返事をし、二階の一室へと入る。
その部屋は母さんが毎日掃除をしているだけあって、いつ入ってもすごく綺麗で、その生活感のなさが、やけに寂しい部屋だった。
部屋の隅に置かれたデスク前に移動する。上には、小さな写真立てが置かれている。その中には、やわらかい笑顔を向ける男性の写真が入っている。
「父さん、ただいま。今日も勝ったよ」
◇ ◇ ◇
父が病に倒れ、そのまま他界したのが数年前だ。
あまりにも突然の出来事で、俺も母さんも現実を受け入れるのにしばらくの時間が掛かった。
でも母さんは〝父さんが残したこの弁当屋をなくしたくない〟と立ち上がり、父さんがやっていた仕事を片端から覚えていった。手探りの経営は当然うまく行かず、客足は減る一方。それでも母さんは、試行錯誤を繰り返して、お店を守ろうとした。
その姿を見て、塞ぎ込んでいた俺も、このお店を守るために何かできないか、と思うようになったのだ。そんな時、俺はある人に出会った。
「君には輝く才能があるわ!」
自信満々にそう言ってのけたその人の言葉は、今でも忘れない。
俺はその言葉に、熱に、突き動かされた。
もし俺に、輝く才能があるのなら――
モデルの仕事を始めたのは、それからすぐのことだった。
◇ ◇ ◇
自室に戻り部屋着に着替えると、椅子に座って一息つく。
目標まであと一勝。
ここで負けるわけにはいかない。
でも、俺は本当に勝てるのか。
『ヒカル。不安なのか』
頭の中に声が響く。
決して、緊張のあまり自分自身で作り出した心の声、というわけではない。声の主は俺のバディ、《ビッグバン・ドラゴン》だ。こいつはエンシェントワールドに住む原初の竜であり、人語は話せないのだが、テレパシーにてコミュニケーションはとれるらしい。こうして時々、カードの中から語り掛けてくる。
「悪いかよ」
『会場では盛大に啖呵を切っていたのにな。なんと言ったか、確か、世界はオレを中心に――』
「あ―――― あ―――― やめろやめろやめろ! 俺はそういうキャラで売ってんの!」
『知っている。悪ふざけだ』
「……お前もだいぶこっちに染まってきたな」
『そういうな。我とて人間と同じように、会話を楽しむ知性があるのだ。地球の娯楽文化は実に興味深い』
そう語るビッグバン・ドラゴンがどことなく楽しそうに感じたのは、俺の気のせいか、それとも、ビッグバン・ドラゴンとの付き合いに慣れてきたからか。
『だが、いかに不安であろうと、勝たねばならないのだろう。お主の夢を叶えるために』
「ああ。俺はもっと有名になる。《一番星ヒカル》という名前を売る。そして、父さんと母さんの弁当屋を、《一番星ヒカルのいる弁当屋》として、もっともっと世間に知ってもらう。それが、俺の決めた夢だから」
『そのための大きな一歩として、世間の注目が集まる、モデルバディファイター最強決定戦で優勝する。そうだったな』
俺は小さく頷く。
「それに、決勝戦の相手は、俺にとって特別な人だ」
『お主に道を示した人間だったか』
そう。
決勝戦の相手は、俺を導いてくれた人。
俺に夢をくれた人。
「《
彼女は、かつてモデル業界で一世を風靡した女性だ。
モデルとしてのノウハウも、バディファイトのいろはも、アゲハさんから教わった。いまだに現役で、毎年行われている《モデルバディファイター最強決定戦》の上位常連でもある。
そんな彼女が、決勝戦の相手だ。
「《一番星ヒカル》の名を売るためにも、アゲハさんに俺の成長を示すためにも、俺は勝たなきゃいけない。いや、勝ちたい」
『であれば、不安になっている暇はないのではないか』
「わかってる」
深呼吸をすると、デッキケースからデッキを取り出し、机の上にカードを並べる。しばらく熟考していた俺に、ビッグバン・ドラゴンがやれやれといった様子で呟いた。
『しかし、ここまでお主が悩み努力している姿など、表でのお主しか見ておらぬ者には、想像もできないだろうな』
「それでいい。《一番星ヒカル》は、いつでも自分を信じて疑わない、光り輝く星なんだ。そのための努力はいくらだってするし、それは誰も知らなくていい」
『ふむ、誰も、か。それは無理だな』
「え?」
『少なくとも、我が知っている』
「……そうだな」
俺とバディのデッキ構築は、夜遅くまで続いた。
◇ ◇ ◇
「さぁ皆様、ついにやって来ました! 《モデルバディファイター最強決定戦》決勝戦! 己の美、そして強さを示すため、数多の激戦が繰り広げられました今大会も、いよいよ大詰めです! 並みいる強豪を打ち倒し、ここまで勝ち上がってきたのは、このファイターだ!」
大きな歓声とともに、ファイトステージ全体が暗転。ファイターエリアにスポットライトが当たる。そこに現れたのは、煌びやかな紫のドレスを纏った女性だった。
「過去優勝6回、準優勝2回と、文句なしの優勝候補筆頭! モデルバディファイター界にこの人ありと言われた、アゲアゲ系バディファイター! 極楽アゲハ選手!」
再び歓声が鳴り響く中、アゲハは両手を広げてそれに答えた。
「今年の優勝も、アタシたちがいただくわよ!」
「ヤバーイ! アゲハちん、今日もノってるぅー!」
首元にマフラーのように巻き付きながらおだてる白竜は、アゲハのバディ、《エーティル》である。アゲハとエーティルは、長年を付き添っているバディだ。
「続いては! 今大会初出場にしてここまで勝ち上がってきたダークホース! バディモンスターの圧倒的強さでライバルたちを次々と打ち破ってきた、ビューティイケメンバディファイター! 一番星ヒカル選手!」
登場したヒカルがポーズを決めると、その周囲に星々が瞬く。
「優勝はオレで決まり。なぜって? それは、このオレが一番星ヒカルだからさ☆!」
黄色い声援がひと際大きく会場内を包み込む。
二人が位置につくと、その目の前にⅤボード(※下部参照)が現れた。
「アゲハさん。今日はあなたを越えますよ」
「あら、この間までアタシの後ろを追っかけてたひよっこが、随分と自信満々ね」
「男子三日会わざれば刮目してみよ、ですよ」
「がっかりだけはさせないでよね?」
対面した二人は、闘志を燃やしながらも、心底楽しそうな笑みをこぼす。
「さぁ、ついに決勝戦が幕を開けます! それでは両者、ルミナイズしてください!」
「天上の神の祝福で、アタシの美貌を示してア・ゲ・ル! ルミナイズ、超アゲアゲヘヴン!」
アゲハがⅤボードに手を置くと、ルミナイズされたデッキが出現。そこから6枚の手札が展開される。
「このオレが誰かって? そう! このオレこそが、世界を照らす一番星! ルミナイズ、I am HIKARU☆」
ヒカルもⅤボードに手を置くと、デッキが出現。同じく6枚の手札が展開される。
「「バディーファイッ! オープン・ザ・フラッグ!」」
両者の掛け声から、まずはアゲハが自分のフラッグを表にする。
「楽園天国!」
続けてヒカルがフラッグを表にする。
「エンシェントワールド!」
ついに、ヒカル対アゲハのファイトが開始された。
【アゲハライフ・12】
【ヒカルライフ・10】
「オレの先攻。ドロー☆ チャージ&ドロー☆ まずはキャスト、《YEAH!HIKARU☆》 手札1枚を捨てて、デッキの上5枚から原初竜2枚を手札に、残りはゲージに!」
ヒカルはドロー一つをするにも、腕を伸ばし、素早く振り上げ、オーバーアクションで自分の動きを観客に見せつけた。
「さぁ派手にいこうか☆! オレとこいつの、光輝くステージが幕を開ける! ゲージ3を払って、《原初の巨竜ビッグバン・ドラゴン》をセンターにバディコール!」
【ヒカルライフ・10→11】
宙に浮かんだ魔法陣から、胴と頭だけの巨大なドラゴンがセンターエリアに出現した。その咆哮は、まるで地響きのごとく会場内を震わせる。
「でたぁ! ヒカル選手のバディ、ビッグバン・ドラゴンだぁ! 今大会、このモンスターを突破した人はまだいません! アゲハ選手、果たして突破できるのかぁ!」
「さらに、《原初の右腕ライティス》をライトに、《原初の左腕レフティス》をレフトにコール!」
今度はライトエリアとレフトエリアに魔法陣が出現し、そこから巨大な二つの手が出現する。五本の指はそれぞれドラゴンの頭になっており、登場と同時に唸りを上げた。
「ビッグバン・ドラゴンで、アゲハさんをアタック!」
巨大な胴体がアゲハに迫るが、
「その攻撃、利用させてもらうわ! キャスト、《グレシオスの護法壁》! ライフ1を払って、攻撃を無効化。さらにゲージを+1よ」
【アゲハライフ・12→11】
ビッグバン・ドラゴンの巨体を護法壁が止める。
「オレのターンは終了。ビッグバン・ドラゴンは、ライティスとレフティスがいる限り、破壊されることはない。さぁどうしますアゲハさん☆!」
「アタシのターン! ドロー、チャージ&ドロー! キャスト、《許しの門‐フォーギブン‐》、《聖浄の門‐サンクチュアリ‐》を設置!」
2枚の魔法が場に置かれると、
「サンクチュアリの能力で2ドロー。さらにフォーギブンの能力で、デッキから《霊水の御使いヲチミズ》をライトにコール!」
金の鎧をまとった白竜がライトエリアに登場する。
「エーティル、、続けて出番よ」
「まかせてチョーだい!」
「ゲージ1を払って、《永遠の守護竜エーティル》をセンターにバディコール!」
「テンションアゲアゲで行くわよン!」
【アゲハライフ・11→12】
アゲハの首に巻き付いていたエーティルが飛び出すと、巨大化してセンターエリアに降り立つ。
「バディギフトでライフを回復したことにより、ヲチミズの能力が発動するわよ。ゲージ+1、さらに1ドロー♪ アはッ、いいカード来ちゃった! 《日輪の御使い メラシエル》をレフトにコールよ」
レフトエリアに純白の翼を持った竜人が舞い降りる。
「これで攻撃開始よ! ヲチミズでレフティスをアタック!」
レフティスは破壊されるも、ソウルガードの能力で場に留まる。
「ヲチミズ、2回攻撃よ! メラシエルも続きなさい!」
レフティスは連続で破壊されるが、2度のソウルガードで場に留まる。しかしこれで、レフティスのソウルがなくなった。
「最後はエーティル、レフティスをやっちゃって!」
「華麗に決めるわよン! エーティルブリーカー!」
エーティルの攻撃が迫るが、
「キャスト! 竜の祝福! その効果で、レフティスとライティスを手札に戻す!」
ヒカルの魔法でレフティスとライティスが手札に戻り、エーティルの攻撃は空振りに終わった。
「ヒカル選手、破壊寸前だったレフティスだけでなく、無傷のライティスも手札に戻したぁ! これでビッグバン・ドラゴンを守る両手はいなくなったが、対するアゲハ選手には、もう攻撃できるカードは残っていない! 今回も突破ならずかぁ!」
「それを決めるには、まだ早くないかしら? キャスト、リカバーベール。ゲージ+2よ」
アゲハはいたって冷静にそう言うと、
「ファイナルフェイズ!」
凛と通る声で宣言した。
「必殺コール! ゲージ3を払って、アヴァロン“ベネディクト・レイ”をライトに!」
ヲチミズがデッキの下に移動すると、ライトエリアに神々しい人型の竜が登場した。
これにはヒカルも思わず声を漏らす。
「アヴァロン……」
「それだけじゃないわよ。ヲチミズがデッキの下に移動したことで、メラシエルの能力が発動するわ」
「……ッ!」
「ビッグバン・ドラゴンを手札に戻して、ライフ+1よ♪」
【アゲハライフ・12→13】
「ビッグバン・ドラゴン、ソウルガードだ!」
「でも、これでソウルは0。そして、ビッグバン・ドラゴンには《ライフリンク即死》、すなわち、場を離れた瞬間にファイトに敗北してしまう能力がある。次で終わりよ♪」
アゲハは、右手をピストルに見立ててビッグバン・ドラゴンを指さすと、その引き金を引きながら、アヴァロンに指示を出した。
「アヴァロン、ビッグバン・ドラゴンにアタックよ! この瞬間、能力発動! ドロップのカード3枚をデッキの下に置き、相手の場のカード全てを手札に戻す!」
「なんとなんとなんとぉ! アヴァロンの能力で、ビッグバン・ドラゴンは手札に戻ってしまう! そうなったら、ライフリンク即死でヒカル選手の敗北だぁ!」
アヴァロンから放たれた無数の光剣が、ビッグバン・ドラゴンを襲う。
実況者も、
観客も、
アゲハ自身も、
勝利を確信した、その時。
「――さすがアゲハさん。アゲハさんなら、ビッグバン・ドラゴンの弱点をついて、アヴァロン“ベネディクト・レイ”を必殺コールしてくる、そう思っていましたよ! だからオレは、まだ負けない! キャスト、以竜易暴!」
「なんですって!」
◇ ◇ ◇
前日の夜。
「ビッグバン・ドラゴンは強い。でも、アゲハさんは絶対にその上をくる」
『我の力を越える、か。随分と大きく出たな』
「力で越える必要はない。“実力で勝てないなら知恵で勝て”アゲハさんはそう言っていた。ビッグバン・ドラゴンがいかに強くても、その弱点を突いてくるはずだ」
準決勝までビッグバン・ドラゴンを使ってきた以上、こっちの手の内は完全にバレている。アゲハさんがその対抗策を用意していないわけがない。当然、俺もアゲハさんのデッキを知っているので、そこはお互い様なのだが。
『我の弱点であれば、お主が一番理解しているであろう』
「ビッグバン・ドラゴン本体は、両手がやられない限り、決して破壊されることはない。代わりに、ライフリンク即死。ビッグバン・ドラゴン本体が場を離れた時、オレはファイトに敗北する」
アゲハさんはいったいどういう戦法で、どんなカードで、ビッグバン・ドラゴンを崩してくるのか。
「ライフリンクか。場を離れた時ね……場を離す……ん、まてよ? 確かアゲハさんが使ってたカードで――」
◇ ◇ ◇
「以竜易暴の効果によって、攻撃を無効化! さらに、ドロップのカード1枚をビッグバン・ドラゴンのソウルに入れる!」
光剣が着弾する直前、ビッグバン・ドラゴンにソウルが入る。これにより、アヴァロンの能力で手札に戻るはずだったビッグバン・ドラゴンは、ソウルを身代わりに場に留まった。
「なんということだぁ! ヒカル選手、ビッグバン・ドラゴンのソウルを増やし、猛攻を凌ぎきりましたぁ!」
しばらく唖然としていたアゲハは、我に返ると、自分の手札を見て、そっと微笑んだ。
「やるじゃないの」
「アゲハさんならアヴァロンを使ってくると信じていましたよ。だからこそ、竜の祝福であえて“両手”を手札に戻したんです。以竜易暴はサイズ3のモンスターが攻撃された時しか使えないんでね」
「なるほどね。なかなか考えるようになったじゃない」
「オレを誰だと思ってるんですか☆」
「どうせ、一番星ヒカルだ、とでも言うんでしょ?」
「いいえ。“アゲハさんの弟子の”一番星ヒカル、ですよ☆」
「アはッ、いいわ。かかってきなさい!」
「もちろん! ドロー☆、チャージ&ドロー☆ もう一度来い、ライティス、レフティスをコール!」
魔法陣が出現し、両手が左右に出現する。
「派手に☆ 豪華に☆ 美しく☆ いけ、レフティス! エーティルにアタック! 能力でサンクチュアリを破壊!」
「くっ、アヴァロンをドロップへ!」
サンクチュアリが破壊されたことで、サイズオーバーによりアヴァロンが消滅する。
「エーティル、戻って!」
「いやー! お家帰るし!」
レフティスの攻撃が直撃する寸前、エーティルは自身の能力によってアゲハの手札に戻る。
「レフティス、2回攻撃! 能力でフォーギブンを破壊!」
「うっ!」
【アゲハライフ・13→11】
「3回攻撃! 能力でメラシエルを破壊!」
【アゲハライフ・11→9】
「次はライティスでファイターをアタック! 能力でアゲハさんに1ダメージ。攻撃と合わせて、合計3ダメージ!」
【アゲハライフ・9→6】
「2回攻撃!」
【アゲハライフ・6→3】
「3回攻撃!」
「キャスト!、ライフ1を払って、《グレシオスの護法壁》!」
【アゲハライフ・3→1】
「これでラスト! ビッグバン・ドラゴン、ファイターをアタック!」
ビッグバン・ドラゴンが咆哮し、巨体をもたげて体当たりを仕掛ける。
その攻撃が迫る中、アゲハはそっと目をつむると、誰にも聞こえないような声量で、静かにつぶやいた。
「あんたは、もっと輝けるよ」
【アゲハライフ・1→0】
ヒカルはポーズを決めると、どこからともなく一輪の薔薇を取り出し、それをステージ上に放り投げて、宣言する。
「勝ち星は、オレのものだよ☆!」
「きまったあああああああああああぁ! モデルバディファイター最強決定戦、優勝は、一番星ヒカル選手だああああああああああ!!」
今日一番の歓声が、ステージを埋め尽くした。
◇ ◇ ◇
数日後。
俺が家に帰ると、母さんがかけよってきて、
「これ、ヒカル宛に届いてたわよ」
一通の手紙を渡された。
差出人は……
知らない名前だ。
俺は自室に戻って、手紙を開く。
それは、新しくできる学校《ワールド・バディ・アカデミア》への招待状だった。強力なバディファイターを世界中から集めているらしく、先日大会で優勝した俺を是非招きたいとのことだった。
すでに在学が決定しているファイターもかなりの数いるようで、その名前の中に、オレはある人物を見つけた。
「……
面白い。一番星ヒカルの名を売る、またとないチャンスだ。
俺は静かに闘志を燃やすと、新たな挑戦への決意を固めた。
終
※Vボード:ファイターがデッキを置いたりモンスターを出したりする、ファイトを行うためのステージ。
<文:校條春>