バディファイト外伝 「神宮時 計 」
なぜ、争いが生まれるのか。
感情があるから。
欲望があるから。
生きていくのに必要だから。
そう、この世が完全ではないから。
では、どうすれば完全になる。
無理だ。
今からではもう遅い。
やり直さなければ。
この世が始まったその時から。
そのためには、強い力が必要だ。
力を集めなければ。
あらゆる力が集まる“特異点”にて、超越神とならなければ。
◇ ◇ ◇
AM 6:00
「そろそろ、こっちからも動かないとね」
彼、《神宮時 計》は自室の窓を開け、まるで小鳥にでも話しかけるように優しくそう言った。部屋には計以外の人影はない。本来、その声に返事があるはずもないのだが、どこからともなく声が返ってくる。
「ふむ、そこまでせねばならぬほどの相手か?」
「ボクらのことを嗅ぎまわっている相手は、かつて世界を変えようとして、王手までいった男だよ。ワールド・バディ・アカデミアを設立した後になにかあったら面倒だろう」
「余の力に敵うとは到底思えぬがな」
「保険だよ、保険。あんなにお膳立てをしてあげたヴァニティもあっさりやられちゃったし、なにが起こるかわからないからね」
言いながら、計はカップに紅茶を注ぎ、テーブルへと運んで椅子に腰を下ろす。
「ならば、いかなる一手を打つのか」
「彼はさまざまな人間を利用し、騙した。彼を憎んでいる人は数多く存在する。それを利用させてもらおう」
「心当たりがあると?」
「いくつかね。今日はその一つをあたろうと思う」
計は紅茶を飲み終えると、外出用の服に着替え、自らのデッキケースを取り出す。
「いくよタイムルーラー。君の力も借りることになる」
「よかろう」
デッキケースを内ポケットに入れ、自室の扉を開ける。
外には執事が一人、控えていた。
「お車のご用意ができております」
「ありがとう」
計は笑顔でそう言うと、広い屋敷を歩きだした。
◇ ◇ ◇
PM 14:00
周囲を山々に囲まれた小さな町。
人口が多いとは言えないものの、都心からも電車が通っており、駅周辺はそこそこ栄えている。
その町の北部に、寂れた商店街がある。駅周辺の発展と共に人がいなくなり、今はもうほとんどの店が閉店状態だ。
その中で、今も細々と営業している外科医院があった。利用客はほとんどおらず、周辺でたむろしている不良グループが、喧嘩の末に運ばれてくることがあるぐらいだ。
だが、今日はその外科医院に、珍しい訪問者がいた。
「失礼します」
医院の扉を開けたのは、薄青色の髪をした少年だった。汚れひとつなく、完璧に決まった純白の衣服は、この寂れた建物とは明らかに不釣り合いだった。
「……お坊ちゃん、よそ者かい?」
椅子に腰かけた初老の男が怪訝な顔をする。外科医院を一人で経営している医師だ。
「ええ。この町には初めてきたんですよ」
「ここはおめぇみてぇなお坊ちゃんが来るとこじゃないよ。この辺には危ない連中もうろうろしてる。さっさと帰んな」
医師はしっしっと手で少年を追い払おうとするが、少年は全く動じなかった。
「それは困りますね。ボクは探し物があってここに来たんです」
「あん? こんな寂れたとこには、なんにもないよ」
「それはどうでしょうか」
「まだ言うかね」
「探し物、というのは語弊がありましたね。実は人を探しているんです」
「……なんだと?」
医師の眉がピクリと動く。
「その人物は、かつてモンスター研究の天才児と呼ばれていました。ですが禁忌の研究に触れて指名手配となり、バディポリスに逮捕された。それから数年後、彼は突如として監獄から姿を消し、今も行方不明なんです」
「……てめぇ、なにもんだ!」
少年が話している間からすでに、医師の顔からは余裕が消え去り、別人のように敵意むき出しの形相になっていた。
「ボクの名前は《神宮時 計》。あなたと共通の敵を持つものですよ、“ドクター・ガラ”さん」
その名を発した瞬間、医師は白衣を脱ぎ捨てた。それと同時に変装が解け、緑の髪と目の下の濃いくまが露わとなる。ひどく狭い診察室の中、かわすことも逃れることも不可能な距離で、ドクター・ガラは計に掴みかかった。
だが伸ばした手は空を掴み、勢い余って後ろのカーテンを引き千切りながら転倒してしまう。ガラの正面にいたはずの計は、気が付けば、ガラの後ろに立っていた。
「話を最後まで聞いてくださいよ」
「……今なにをした」
ガラは体を起こしながら計を睨みつけた。
「そんなことはどうだっていいんです。ボクにあなたの力を貸していただけませんか」
「何をバカなことを」
「いえ、きっとあなたも興味のある案件だと思いますよ。なにせ、今のボクの敵はあの《臥炎キョウヤ》なんですから」
「ッ! キョウヤだとッ!?」
ガラはその名前に声を荒げた。臥炎キョウヤは、ガラと因縁浅からぬ仲だったからだ。
「あの臥炎キョウヤに一泡吹かせたいとは思いませんか? ボクはあなたに十分な設備と研究施設を提供できますよ。もちろん世間には知られない“秘密”のね。悪い話じゃないでしょう?」
「……その話が本当だとして、てめぇに勝算はあるのかよ。返り討ちにあってもう一度独房送り、なんてごめんだぜ」
「その点は、実際に見て判断してもらった方が早いと思いますよ」
計が言い終えると同時、再び医院の扉が開いた。
「……貴様がドラゴッドの使い手だな」
入ってきたのは、長いストールを身に纏った女性だった。その青い瞳は、鋭く冷たく、計を見据えている。
「そうだ、と言ったら?」
「キョウヤ様の命だ。おとなしくついて来てもらおう」
「それは困るな。ボクにはまだやることがあるんですよ」
「お前の都合など聞いていない」
「なら、ボクとバディファイトをしませんか? あなたが勝ったら、おとなしくついていきますよ、《ソフィア・サハロフ》さん」
「ソフィア・サハロフだと!?」
その名前は、ガラも聞いたことがあった。臥炎キョウヤの部下として、あらゆる場所に現れ、どんな命令も遂行するという冷酷無慈悲な女幹部。
「……その言葉、忘れるなよ」
「もちろん」
二人はデッキケースを取り出すと、ファイトシステムを起動した。病院だった場所は、一気にファイトステージに代わっていく。Ⅴボードが両者の手元に現れると、二人はルミナイズした。
「空は眠り、大地は凍てつく。ルミナイズ、星神の大運命」
「真実の時が終わりを告げ、ここに永遠が完成する。時よ止まれ。ルミナイズ、ジ・エンド・ゼロ」
「「バディーファイッ! オープン・ザ・フラッグ」」
ソフィアがフラッグを表にする。
「レジェンドワールド!」
続いて、計がフラッグを表にする。
「ゴッドクロック!」
計が4枚のカードを繋げると、頭上に巨大な時計が出現した。時計の針は時を刻み、常に動き続けている。
そのフラッグを目の当たりにしたソフィアとガラは、驚きの声を漏らす。
「なんだ、このフラッグは……!」
「見たことのないフラッグ……まるでキョウヤ様と同じ」
計は余裕の笑みを浮かべながら、両手を広げた。
「驚くのは早いですよ。ボクのゴッドクロックは、まだ真の姿を見せてはいないんですから」
「だが、何もさせなければ問題ない」
「そうなるといいですね。さぁ、あなたのターンですよ?」
「私のターン。ドロー、チャージ&ドロー。《スピカ・ヴァルゴ》をセンターにコール。その効果で手札1枚を捨てて、デッキから星のモンスターを手札に加える。さらに、捨てられたアルヴィドルの効果でゲージ+1、1ドロー」
ソフィアはカードを引き終えると、2枚のカードを一気に展開する。
「来い。《幻星の巨神アストライオス》をレフト、《星神アストライオス》をライトにバディコール!」
【ソフィアライフ・10→11】
太陽を模った星神と巨人が姿を現す。
その瞳はソフィア同様、全てを見通すように鋭く、冷たい。
「全てのカードよ、凍てつき、その動きを止めよ。キャスト、ゲージ2を払い、《大運命 凍てつく星辰》を設置」
次の瞬間、ファイトステージの頭上が暗い夜空となった。無数の星々が瞬くと、計のファイトステージが凍っていく。
「このカードにより、貴様の場のカードは全ての能力が無効化される」
「なるほど、どんなに強いカードも、能力が使えないんじゃ意味がないですね」
「ゆくぞ。星神アストライオスでファイターにアタック!」
星神アストライオスから放たれた光線が、計に迫る。
だが、
「クロック-Ⅱ、発動」
光線は計に当たる直前で、まるで固まったかのように、動画の〝
「何が起きた!?」
これにはソフィアも思わず驚きの声をあげる。
「ゴッドクロックの能力です。一度だけ、あらゆる攻撃の“時間を停止させ”無に帰すことができる。いくらあなたの星辰でも、ボクのフラッグ、ゴッドクロックの針は止められない」
計が止まった光線を人差し指でつつくと、この世界から消えるように、光線は姿を消した。
「まさか、貴様のフラッグは……!」
「そう。ボクのフラッグは“時”を操るフラッグなんですよ」
「くっ、ターン終了」
「ボクのターン。ドロー、チャージ&ドロー」
計はドローを終えると、頭上のゴッドクロックを指さす。
「クロック-Ⅰ、発動」
言った瞬間、計は自身の手札を1枚デッキの下に置いた。すると、デッキの上から3枚が宙に浮き、1枚が手札へ、2枚がドロップへと移動する。
「ゴッドクロックが、3ターン先の“未来”を呼び寄せました。キャスト、《クロノス・シン・エピタ》。ゲージを+1し、デッキからタイムドラゴンのドラゴッドを手札に加えます」
計は手札に加えたカードを指先で掴むと、そのままコールする。
「見るがいい、時の支配者にして世界を創世した神の姿を。ゲージ2を払い、《時の神タイムルーラー・ドラゴン》をセンターにバディコール!」
【計ライフ・10→11】
夜空に穴が開き、そこから眩いばかりの光が差す。
その光の中からゆっくりと姿を現したのは、まるで天使のように美しい純白の竜神だった。
「余が時を司るドラゴッド、タイムルーラー・ドラゴンである。全てを超越し、全てを完全な姿に戻す神なり」
タイムルーラーがセンターエリアに降り立つ。
だが、すぐさま星辰が瞬き、タイムルーラーの足元を凍らせた。
「いかにドラゴッドと言えど、我が星辰の前では何もできない」
「ふむ、余を封じると申すか」
「これは敵わないな。ボクもお手上げだよ」
不利な状況にもかかわらず、計とタイムルーラーはまったく焦る様子がない。
「じゃあ、タイムルーラーでスピカ・ヴァルゴをアタックだ」
「ふん」
タイムルーラーが手に持っている錫杖を振ると、スピカ・ヴァルゴは突如出現したブラックホールに飲み込まれ、姿を消した。
「これでボクのターンは終了だよ」
「私のターン。ドロー、チャージ&ドロー。幻星の巨神アストライオスの能力発動。1ドローし、相手に1ダメージを与える」
アストライオスから放たれた光球が、計に直撃する。
「くっ」
【計ライフ・11→10】
「もう一度スピカ・ヴァルゴをセンターにコール。その効果で手札1枚を捨てて、デッキから星のモンスターを手札に加える。さらに、手札から捨てられたスムスムの効果で、タイムルーラーを破壊だ!」
ソフィアが手のひらを前にかざすと、そこから光球が3つ放たれた。光球はタイムルーラーを囲むと、一斉に着弾し、破壊した。
「ああ、やられてしまいました」
タイムルーラーが破壊されてなお、計はまったくと言っていいほど動揺しない。
「いけ、2体のアストライオス、スピカ・ヴァルゴ!」
3体のモンスターの攻撃が続けざまに計に直撃する。
【計ライフ・10→5】
「これで私のターンは終――」
「クロック-Ⅲ、発動」
計の声と同時、センターエリアに、破壊されたはずのタイムルーラー・ドラゴンが復活する。
「ゴッドクロックが、タイムルーラー・ドラゴンの“時を遡り”、破壊前の状態に戻しました」
「だが、いくら戻したところで、星辰の効果によりタイムルーラーは全ての能力を失っている」
「そうですね。タイムルーラー・ドラゴン“では”なにもできない」
「……何が言いたい」
「最初に言いましたよね? ゴッドクロックの“真の姿”はまだ見せていないと」
「……!」
タイムルーラーが、錫杖を天に掲げる。
すると、さっきまで規則正しく動いていたゴッドクロックの針が、急に加速を始めた。針はどんどん速度を上げ、全ての針が12を指したところで、ピタッとその動きを止めた。
「反刻」
静かな計の声を合図に、ゴッドクロックが崩壊を始めた。
バラバラとなり崩れ落ちるゴッドクロックの中心から、長い首をうねらせながら漆黒の竜が姿を現す。竜は1体に留まらず、次々にその数を増やしていく。落ちたゴッドクロックのパーツは、現れた黒竜たちの一部として、再構築される。
タイムルーラー・ドラゴンは宙に浮き、その中心へと向かった。そして、最後に現れたひと際大きい黒竜の額に乗ると、その胴体と融合する。
「これが、ゴッドクロックとタイムルーラーの力! いや、この2つは元より、1つの神の力を分けた仮の姿に過ぎない! これこそが、時の神の真の姿!」
両手を広げた計の顔に、さきほどまでの面影はない。穏やかに微笑んでいた彼の表情は、今や狂気の笑みに染まっている。
「さぁ! 降臨せよ!!! 《真なる時の神ジ・エンドルーラー・ドラゴン》!!!!!!!!!!!!!」
「世は全。全は余。すなわち、余が世界なり」
あまりの禍々しさに、ソフィアはもちろん、観戦していたガラも声を震わせる。
「これが、やつの本当の姿……!」
「フラッグとモンスターが、合体しただと……!?」
夜空に浮かぶ星辰が瞬き、ジ・エンドルーラーの周囲から凍り付かせていく。だが、その氷がジ・エンドルーラーまで到達することはなかった。到達する前に、まるで最初からなかったかのように、消えてしまうからだ。
「ジ・エンドルーラーに、そのような小細工は通用しない! ボクのターン! ドロー、チャージ&ドロー! これで終わりだ。キャスト、ライフ1を払い《クロノス・トロフ》! スピカ・ヴァルゴをデッキの下へ!」
スピカ・ヴァルゴがソフィアのデッキの下へと戻り、姿を消す。
「センターを開けたところで、まだファイトは終わらない」
「いや、もう終わっているんだよ、このファイトは」
「なに……!?」
「アタックフェイズ」
ジ・エンドルーラーが攻撃態勢に入る。
「くっ」
ソフィアはそれに応戦しようと、手札のカードを手に取ろうとするが、
【ソフィアライフ・11→7】
「ぐああああああ!!!」
次の瞬間には、ソフィアは吹き飛ばされ、ライフが減っていた。
観戦しているガラも、攻撃を受けたソフィア当人でさえも、なにが起きたのか理解できなかった。
「どういうことだ……!」
ソフィアが立ち上がると同時、計は次の指令を下す。
「2回攻撃」
「今度こそ……!」
その攻撃を止めようと、ソフィアは手札のカードを使おうとするが、
【ソフィアライフ・7→3】
「ぐああああああああ!!!」
再び、気が付いた時にはソフィアは攻撃を受けていた。
いや、攻撃を受けたのかどうかすら、ソフィアにもガラにもわからなかった。2人とも、ジ・エンドルーラーが攻撃を放つ瞬間を、まったく見ていないのだ。
ジ・エンドルーラーが動き出した次の瞬間には、攻撃は“終わって”いる。
ソフィアの脳裏に、いやな考えが浮かぶ。
「まさか、ジ・エンドルーラー、その力は……!」
「ああ、ご想像の通りさ。ジ・エンドルーラー・ドラゴンには、相手の“時を止める”能力がある」
「っ!!」
「言っただろう? もうこのファイトは終わっていると。止まった時の中では、能力を使うことも、カードを使うこともできはしない。当然だ。人も、モンスターも、この世の万物は時に囚われているんだから! さぁやれ! ジ・エンドルーラー・ドラゴン、3回攻撃!!!!!!」
「余が告げる。時に囚われ、争いを絶やさぬ哀れな生物よ。時の牢獄の中で果てるがいい。これすなわち、“永遠の時”なり――」
【ソフィアライフ・3→0】
「ぐあああああああああああああああああああ!!!」
ジ・エンドルーラーの声が終わると同時、ソフィアのライフは0となり、ファイトは終了していた。
ソフィアは上体を起こし、計を睨みつける。
「ハァハァ、私の負けだ。だが、ジ・エンドルーラー、その能力確かに見届けたぞ……!」
「いや、それは幻ですよ」
「なに!?」
「反刻」
◇ ◇ ◇
気が付くと、ガラは自分の医院にいた。
「なんだ!?」
窓からは日が差し、外では鳥が鳴いている。
さっきまでの光景が夢だったかのような穏やかさだった。
「ボクに協力してくれる気になりましたか?」
声にびっくりしたガラが後ろを振り返ると、そこには神宮時計が優しい笑みを浮かべて立っていた。
本当に、さっきまでの光景が嘘のように。
「ソフィア・サハロフはどこに行った……?」
「彼女なら、“まだ”来ていませんよ」
その言葉に、ガラの頬を嫌な汗が伝う。
「おい、それって……」
「時間を確認してみてはいかがですか?」
「なんだと?」
ガラは時計を確認する。
PM 14:00
あんなにいろんなことがあったのに、時間が全く進んでいない。いや、それどころか、時計の針は、神宮時計が現れる直前に見たままの時刻を指し示していた。
「カーテンはどうですか?」
言われて、ガラはカーテンを見る。計に掴みかかろうとして破れたカーテンが、なにごともなかったかのようにそこにあった。
「おいおい、まじかよ……まさか、“時間を巻き戻した”ってのか?」
信じられない。
信じられないが、さっきのファイト、そして今の状況が、ガラをその結論へと導いた。
「だが、辻褄が合わないこともある。俺の変装は解けたままだし、ファイトの記憶も残ってる……まるで、俺の“時”だけ戻ってないみたいに」
「それは、ボクからの特別大サービスですよ」
そう言いながら、計は丁寧に折りたたまれた白衣とマスクをガラに渡す。それは、計が来るまでガラが使っていた変装道具だった。
「……ちっ。何から何まで手の平の上かよ」
「これがボクの“勝算”です」
ガラは自分の頭を抱える。
「ハ、ハハ……ククク……」
か細い声は次第に強くなり、笑い声となる。
「ハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!!! おもしれぇ! おもしれぇじゃねぇか! いいぜ、てめぇに協力してやるよ! この世紀の大天才、ドクター・ガラ様がな!!!!!!!!!」
◇ ◇ ◇
ドラゴッドの使い手がいる、と匿名のリークがあった。
出所不明の情報など信用できるはずもないが、何か手掛かりがあるかもしれないからと、キョウヤの命令を受けソフィアはその場所を訪れた。
町から離れた外科医院。
ソフィアは扉を開ける。
「……」
中には、誰もいなかった。
一応調べてはみたが、特に何も出てこない。
「やはり、偽の情報か」
ソフィアは一通り調べ終えると、その外科医院を後にした。
また、次の手がかりを追うために。
◇ ◇ ◇
PM 19:00
計が屋敷に戻ると、一通のメールが届いていた。
メールにはデータが添付されており、そこには世界各国の子供の名前と情報が記されている。
……未門友牙、一番星ヒカル、雨傘メイル、アレクサンドル・アンク、クリーガー・ベルンハルト……
「ようやく揃ったみたいだね」
計は思わず笑みをこぼす。
「ついに、始めるのか?」
「ああ。これでワールド・バディ・アカデミアを……いや、ボクらの“計画”を進められる」
「完全な世界へと至るために」
「そう、完全な世界だ。この世界は“やり直さなければ”ならないからね」
終
<文:校條春>